5月17日(日本時間)、Appleは自社が提供するサブスクリプション音楽配信サービスApple Musicが『ロスレス』や『3D音源』に利用料金の引き上げなしで今年6月から対応する事をアナウンスしました。このサプライズにはAppleユーザーからは歓喜の声が止まりません。

出典:Apple
それもその筈。Apple Musicの利用料金は月額980円(税込)。現在ロスレス音源配信を提供しているAmazon、SONYと比較してこれは半額程度の安さ。
ロスレス圧縮対応Apple Music、Amazon Music HD、mora qualitas比較
サービス | Apple Music | Amazon Music HD | mora qualitas |
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曲数 | 7,500万曲 | 7,000万曲 | 非公表 |
ロスレス品質 | デバイス単体:44.1kHz/16bit~48KHz/24bit USB DAC(iPhoneの場合):192kHz/24bit | 44.1kHz/16bit~192kHz/24bit | 44.1kHz/16bit~96kHz/24bit |
ロスレスフォーマット | ALAC | FLAC | FLAC |
3Dオーディオ | 対応(空間オーディオ:Spatial Audio) | 対応(360 Reality Audio) | 非対応 |
月額利用料金 | 980円(税込) | 1,980円(税込)※アマゾンプライム会員:1,780円 | 2,178円(税込) |
私は現在Amazon Music HDを利用しており、プライム会員なので1,780円(税込)の支払いを月々行っています。元々下位プランとなるAmazon Music UNLIMITED(月額980円。プライム会員は月額780円)を利用していたのですが、無料のお試しキャンペーンでAmazon Music HDにアップデート。そのままロスレス音源の虜となり、今も契約を継続中です。
しかしApple MusicとAmazon Music HDの料金差は2倍。サービス内容は大きく変わらないので、このままの料金設定が続くのであれば、大半のユーザーはApple Musicへ移行してしまうでしょう。
しかし流石スピード命のグローバル企業。Amazonは即座に対抗策を打ってきました。Amazon Music UNLIMITEDからAmazon Music HDへの無料アップデートを公式にアナウンス。しかもApple Musicより早い即日のスタート。
現段階ではアメリカ、イギリス、 ドイツ、 カナダ、 フランス、 イタリア、スペインが対象国となり、日本は含まれていません。ただしApple Musicがロスレス音源に対応するのは6月。それまでに日本でも引き下げが行われる可能性はかなり高いと予想します。
そうなると、Amazon Music HDの利用料金がプライム会員であれば780円(税込)に。ロスレス環境が月額780円で手に入る。信じられない安さです。しかしAmazon Music HDの利用料金の引き下げ(日本はまだですが)が行われたのは間違いなくAppleのおかげ。これにはただただ感謝ですね。
ここでApple MusicとAmazon Music HDのメリットとデメリットを検証してみましょう。
Apple Musicを利用するメリット
月額利用料金がとにかく安い!
まずは何と言っても利用料金の安さ。192kHz/24bitの高品質なロスレス音源配信に対応して月額980円(税込)というのは間違いなく破格。
空間オーディオがイヤフォンに対応している
空間オーディオに対応し、下記の製品を用意すればイヤフォンで3D音源を聴く事が可能。
- AirPods Pro または AirPods Max
- iPhone 7 以降または以下に該当するモデルの iPad:
- iPad Pro 12.9 インチ (第 3 世代) 以降
- iPad Pro 11 インチ
- iPad Air (第 3 世代) 以降
- iPad (第 6 世代) 以降
- iPad mini (第 5 世代)
- iOS または iPadOS 14 以降
- この機能に対応した App のオーディオビジュアルコンテンツ
まだコンテンツ数が少ないのでメリットと呼べるかは微妙ですが、Amazon Music HDが3Dオーディオに対応する環境は2021年5月18日時点でスピーカーのみ。折角ならイヤフォンでも聴けた方が良いですよね。
Apple Musicを利用するデメリット
ロスレス音源を聴く為の環境が整っていない
サービスをしっかり使おうとするとApple製品を揃えなくなければなりません。Androidユーザーからするとかなり敷居が高いですね。またMacRymorsのレポートによると、AirPods Pro、AirPods Maxでは、Bluetooth接続時にロスレス音源の再生が不可能。AirPods Maxのみがライトニング接続で対応する様ですが、ユーザーの比率で言えばかなり少ないでしょう。
BluetoothにはHWA、LDAC、aptX Adaptive、aptX HD(48kHz/24bit~96kHz/24bit)というロスレス環境に準拠したコーデックが用意されています。しかしiPhoneが対応しているのはSBC、AAC(48kHz/16bit)という下位規格のみ。Bluetoothでロスレス音源を聴く事自体、実は難しいのです。
有線接続は変換アダプタを利用する必要あり
コネクタの仕様にも難点が。独自開発のライトニングコネクタに対応するイヤフォン、ヘッドフォンは数がとても少なく、iPhoneユーザーが有線でイヤフォン、ヘッドフォンを使う場合はライトニング→イヤフォンジャックの変換アダプタを使用するのが通常。
変換アダプタはiPhoneのミニマムデザインを阻害するので、出来れば着けたくないという人が大半のはず。そうなると、iPhoneユーザーに関してはアップデートの恩恵を受けられる人が殆どいないというまさかの状況に。イヤフォンジャックを求めてAndroidに機種変する人は・・・流石にいないでしょうか。
Amazon Music HDを利用するメリット
海外と同様に値下げされればロスレス音源配信サービスが月額780円~
プライム会員であれば月々200円の割引を受けられるAmazon Music HD。日本でも実際に値下げが行われれば780円(税込)になるので、価格的には無敵です。値下げが行われるまでは無料体験キャンペーンを頻繁にやっている下位プランAmazon Music UNLIMITEDで様子を見てはいかがでしょう。
AmazonのFireタブレットが採用しているFire OSはAndroidがベース。よってAmazonが配信しているアプリのUIは、Androidに合わせて最適化されている傾向にあります。例えばAmazon Musicでイコライザ機能が使えるのAndroidのみです。
Android端末はイヤフォンジャック搭載モデルが多い
Amazon Music HDで利用する端末をAndroidと仮定すると、多くのAndroid端末にはイヤフォンジャックが備えられています(一部のフラッグシップモデルは非搭載ですが)。変換アダプタは不要でハイレゾに対応するイヤフォン、ヘッドフォンを接続すれば準備は完了。
Android端末はロスレス対応のBluetoothコーデックをサポート。コネクタも汎用的でUSB DACを探しやすい
さらにHWA、LDAC、aptX Adaptive、aptX HDといったロスレス音源対応のBluetoothコーデックもサポート(OSのバージョンや端末により異なる)。ロスレス音源を聴ける環境を手軽に構築出来るのも、Androidの魅力と言えるでしょう。192kHz/24bitの最高音質を聴く為に必要となるUSB DACのバリエーションが豊富なのも、汎用的なUSB-Cコネクタを採用しているAndroidならでは。
OCNモバイルONEの無料オプションMUSICカウントフリーに対応している
私がAmazon Musicを選ぶ最大の理由は、OCNモバイルONEの無料オプションMUSICカウントフリーに対応しているから。MUSICカウントフリーによってAmazon Musicの通信はノーカウントに。Amazon Music HDでも途切れる事なく同サービスはしっかり機能します。
Amazonが公表しているSD、HD、Ultra HD最高音質1曲分(3分半程度)の容量がコチラ。
- SD(ロッシー圧縮):9MB
- HD(ロスレス、44.1 kHzサンプルレート):51MB
- Ultra HD(ロスレス、最大192 kHzサンプルレート):153MB
HDに関しては10曲聴けば500MB程度。Ultra HDではなんと1.5GB。Ahamoやpovoではすぐにパンクしてしまいます。OCNモバイルONEのSIMは音声対応で770円(税込)~と激安。Amazon Music HDを聴く為だけに契約しても満足出来るレベル。
Amazon Music HDを利用するデメリット
日本では利用料金が未だ1,980円。一刻も早い値下げを希望
一部海外ではAmazon Music UNLIMITEDから自動的にアップデートされ、利用料金が大きく引き下げられたAmazon Music HD。しかし日本での現行料金は月額1,980(税込)のまま。私はこの価格でも不満なく使っていましたが、Appleが980円(税込)で同等のサービス提供を開始する以上、一刻も早く値下げして欲しいのが本音です!
3Dオーディオが使えるのはスピーカーのみ
3Dオーディオが使えるのは対応するスピーカーのみというのはやや残念なポイント。SONYの規格である『360 Reality Audio』は、接続した全てのイヤフォン、ヘッドフォンでその効果を得られる事が特長です。Deezerとnugs.netはイヤフォン、ヘッドフォンにも対応しているので、なぜAmazon Music HDのみが非対応なのか分かりません。利用料金と共に、是非この部分はアップデートしていただきたいですね。